【書籍レビュー】『一汁一菜でよいという提案』は料理がしんどい人のお守り

一汁三菜書評アイキャッチ

土井善晴さんの『一汁一菜でよいという提案』を読んだので、レビューします。

『一汁一菜でよいという提案』はこんな人に読んでほしい本です。

  • がんばって家族に色々なご飯を作らなければ、というプレッシャーを感じる
  • 家族の食事作りを1人で担っていることがきつい
  • 家族に作って食べさせているご飯に自信が持てない
  • とにかくご飯作りがめんどくさく感じる
目次

『一汁一菜でよいという提案』はこんな本

著者プロフィール1957年生まれの料理研究家
教育機関、研究機関の講師などを歴任
テレビの料理番組をはじめ、SNSでも発信
発行年・ページ数2016年(文庫版2021年)・94ページ

土井善晴さんは、日本の家庭料理を伝えてきた女性たちをリスペクトし、作る人も幸せでなければならないと考えます。

そのために、毎日の食事作りに疲れや辛さを感じている人に「提案」をしています。

日々の家庭料理は特別においしいものでなくてよい、ご飯と味噌汁の一汁一菜でよい。

それらの理由についてと考え方、また、和食のおいしさとは何か、日本人は何を大切にし美しいとしてきたかについても紹介しています。

『一汁一菜でよいという提案』を読んだ感想

しんどさの再発見と画期的な提案

「家族の食事作りがつらい」という感覚を持つ人は、おそらくずっと存在していたと思います。

ただそれは、ほぼ妻・母親という立場の人に限定されたものだったことから、見過ごされてきました。

風前

私も独身一人暮らしの自炊では感じたことがない感覚です

筆者は料理研究家として長年活動する中で、そんな声を聞き続けたのではないでしょうか。

一汁一菜なら十分な栄養が採れ、献立もシンプル。

買い物であれこれと悩むこともなく、後片付けも少なくて済む。

有名な料理研究家の男性が提案したことの意味はとても大きいです。

シンプルな食事を提供して「これでいいのかな」と迷ったら思い出しましょう。

風前

あの土井先生が言ってたから大丈夫!

現状との相入れなさ

ただ、正直うちでは一汁一菜は難しいだろうな、というのがこの本を読んだ最初の印象でした。

息子は離乳食期から好き嫌いが激しく、健診で偏食傾向を指摘されたこともあります。

少しずつ食べられるものは増えてきていますが、味噌汁は好きではないようです。

いつも大さじ1杯くらいの汁に、小指の爪の先ほどの具をよそってやっと食べています。

夫はかなり食べるし、男性受けのいいボリュームのあるおかずがない日が続くと厳しい。

作る側としてもモチベーションに関わるため、夕食のおかずには少し楽しみが欲しい。

この辺りで、自分でも食をエンタメとして捉えている部分があるなあと思いました。

もっとおいしく、もっと美しく、あるいはもっと安く、もっと栄養が採れる食事……あ、もうムリ。

追求してしまうと限界がなくなり、どんどんご飯作りが苦痛になる。

食事作りは終わりのないパズルです。

毎日無数のレシピから選び、無数の食材から選び、無数の組み合わせを選ぶ。

そこに食材の価格やら食器選びやら片付けやらが上乗せされたら、とんでもなくリソースを持っていかれます。

キリがないからと適当に選んでしまうと、家族の健康によくないかもしれない。

そんな葛藤から、がんばってしまう人も多いと思います。

自分なりの基準を作ろう

こういった際限のないエスカレートに境界線を引くのが、著者の勧める一汁一菜です。

『一汁一菜でよいという提案』では、自分で判断できる基準を持つことも大切だとしています。

ということは、一汁一菜でなくても、自分の中に「ここまでで十分」という献立の基準を作ればいいということに気づきました。

子育て中の家庭の場合、

  • 子供の好き嫌い
  • 大人の満足感
  • ご飯作りのハードルが高くない(献立決定・買い物・後片付けも含めた時間と精神的・体力的な余裕)
  • 栄養バランス・食費など

主にこれらを踏まえて献立を立てることが求められます。

風前

これ、毎日ちゃんとやろうとすると私はかなりきついです

自分の中での「がんばりすぎない基準」を優先順位をつけて書き出してみると、以下のようになりました。

(1)作る人が辛くないこと(2)お腹を満たすこと (3)栄養と食費(4)満足感や好き嫌い

これらはその時々の状況で順番が入れ替わることもありますし、「作る人」が私でなくなったとしても同じです。

それを踏まえて、具体的な献立はこんな感じ。

  • 主食+子供が食べる主菜+味噌汁 (例)ご飯+唐揚げ+野菜の味噌汁
  • 主食+大人が好きな主菜+子供が食べる副菜 (例)ご飯+チンジャオロース+甘辛大豆炒め
  • 主食+みんなが好きな主菜 (例)カレーライス、パン+シチュー、ご飯+
  • みんなが好きな主食と主菜を兼ねるもの(例)チャーハン、オムライス、ラーメン+トッピング

その日の状況によってここに一品増えることもあれば、たまに減ることもあります。

こういった「ここまでで十分」という献立をあらかじめ何パターンか考えておきます。

そして、もう今日は考えたくない……という日にはそこから献立を決定。

もし子供が食べなくても、平日は給食があるし、トータルでバランスが取れていればよしとしています。

風前

家にある食材との兼ね合いもありますが、それは余裕のあるときに回せばいいと考えています

『一汁一菜でよいという提案』の感想 おわりに

私は子供の頃、味噌汁が苦手でした。

どこがということもないけれど、なんとなく好きじゃない。

今考えると、出汁や味噌の種類だとか、味噌汁が出てくる朝に食欲がない子供だったからとか、そういった理由だったのかもしれません。

食べないと親に怒られるので仕方なく流しこんでいました。

自炊して好きなように作れるようになると、苦手ではなくなりました。

夫が味噌汁好きだったので、結婚してからはしょっちゅう作るようになりました。

そして40代の今は、味噌汁に救われています。

食欲が出ないとき、粗熱を取った味噌汁でご飯がすすみ、野菜もタンパク質も採れる。

一汁一菜最高。

できれば、将来年を取ってからでもいいので、息子にもこのおいしさをわかってもらえたら嬉しい。

そんなことを考えながら『一汁一菜でよいという提案』を読み終えました。

透き通った出汁のように暖かく、清浄な気持ちになれる本でした。

著:土井善晴
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